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日外会誌. 126(1): 46-50, 2025
特集
少子化時代のこどもの外科医療のあり方
8.小腸移植領域からみたこどもの外科医療のあり方
内容要旨
日本では過去10年間で出生数が約30%減少し,それに伴い小腸移植を必要とする小児腸管不全症例の減少が推測される.
腸管不全は主に新生児期に発症し,その中で合併する腸管不全関連肝障害(IFALD)が小腸移植の主要な適応となる.近年,本邦では未承認であるものの,魚油由来脂肪乳剤の使用や短腸症候群に対するGLP-2アナログ製剤による新規治療,IR技術の進展による中心静脈カテーテル挿入技術の向上などにより,包括的な腸管リハビリテーションが導入され,小児腸管不全治療の質は向上している.これにより小腸移植の必要性が一部減少する傾向にあるが,特に進行したIFALDにより肝臓-小腸移植を必要とする患者は依然として存在する.国内における小腸移植の実施数は年間3~5例にとどまっており,少子化の進行に伴い移植適応症例数の減少が予測されるものの,小児脳死ドナーからの臓器提供が増加すれば,肝臓-小腸移植の実施数が今後増加することが期待される.
魚油由来脂肪乳剤の国内承認により,IFALDの進行を抑え,これまで救命が困難であった症例にも適切な移植が可能となり,小児腸管不全の治療成績のさらなる向上が期待される.
本稿では,少子化に伴う小児外科医療の現状と,小腸移植を中心とした治療戦略の展望について論じる.
キーワード
小腸移植, 腸管不全関連肝障害(IFALD), 小児脳死ドナー, 腸管リハビリテーション, 魚油由来脂肪乳剤
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