[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (780KB) [会員限定]

日外会誌. 126(1): 27-31, 2025


特集

少子化時代のこどもの外科医療のあり方

5.呼吸器外科医からみたこどもの外科医療のあり方

順天堂大学医学部附属順天堂医院 呼吸器外科

鈴木 健司

内容要旨
ほぼ全身におよぶ外科治療を小児外科医は行わなければならない.その解剖学的な知識は膨大なものとなる.技術的な観点からいえば,基本的にworking spaceも臓器も小さいこどもの手術は極めて困難である.加えて生理学的な制限も多く,例えば許容される出血量も少ない.胸部疾患に限っても,小児外科が扱う疾患のラインナップは多彩である.また,気道確保に関しても基本的に成人では当たり前の様に行われる分離換気が困難な状況もある.小児が故に成人と異なり,その後の成長を加味した皮膚切開,外科アプローチが求められる.故にいわゆる低侵襲手術が極めて重要となろう.家族と患児との関係は成人の親子関係とは一線を画すものであることは想像に難くない.これらを総合的に対応するためには小児外科医としての極めて高度な修練が求められる.胸部のような特殊環境における手術では専門知識を要することも多く,呼吸器外科医のサポートが必要となる.同じ胸部の疾患に対する外科治療も対象となる臓器や疾患の状況によって,難易度が大きく異なるが,その判断にも呼吸器外科専門医に求められる経験が必要となることなどを考慮すれば,胸部疾患に対する小児外科は一部のhigh-volume centerに限ることも一考に値するであろう.一般的に呼吸器外科医として本質的に独り立ちするのに数百例の肺切除が必要とされるがそれを小児外科医に求めるのは不可能に近い.

キーワード
多専門医, 協調, 少子化, 技術維持, 集約化


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。