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日外会誌. 124(3): 246-252, 2023


特集

がん診療における層別化医療の現状と今後の展望

4.肺癌(非小細胞肺癌)における層別化医療の現状と今後の展望

千葉大学大学院医学研究院 呼吸器病態外科学

鈴木 秀海 , 吉野 一郎

内容要旨
肺癌ではTNM分類により予後予測が可能であり,臨床病期に基づいて治療方針が決定されてきたが,最近では多くのエビデンスが病期よりも詳細なT因子や遺伝子異常のタイプごとに蓄積され,治療フローチャートは極めて複雑化してきた.切除例の過半数を占める臨床ⅠA期の早期肺癌では,縮小手術の有効性が示されており標準術式が変わりつつある.また今年は分子標的薬と免疫チェックポイント分子阻害薬を用いた術後補助療法が新規に承認され肺癌に対する周術期治療の選択肢が増えた.Ⅳ期肺癌に対しては,八つの遺伝子異常に対する標的治療薬がドライバー遺伝子変異/転座陽性患者ではそれぞれの分子標的薬が第一選択であり,遺伝子異常陰性例ではPD-L1の発現状況により免疫チェックポイント分子阻害薬を含む治療が第一選択薬となり,さらにそれぞれの二次治療以降まで推奨治療が存在している.さらに多くのエビデンスが次々と発出され,ガイドラインの改訂も毎年行われている状況では,外科,内科,放射線科,病理医による多職種カンファレンスでの治療方針決定が望ましい症例が増えている.また複数の選択肢がある場合,治療方針の決定には医療者側のみならず,shared decision makingがますます重要になっている.

キーワード
非小細胞肺癌, 病期分類, 手術適応, 周術期治療, 層別化医療


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