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日外会誌. 124(3): 239-245, 2023


特集

がん診療における層別化医療の現状と今後の展望

3.乳がんにおける層別化医療の現状と今後の展望

がん研有明病院 乳腺センター

大野 真司

内容要旨
乳がんは女性の悪性疾患の中で最多であるが,手術および放射線治療の局所治療に加え,バイオロジーに応じた薬物療法の進歩によって,その治療成績は著しく向上してきた.
1960年代から1970年代には化学療法やホルモン療法による再発抑制や生存期間延長の効果が認められ,治療効果予測因子を決定し,それに従って治療法を選択することの重要性が認識されるようになった.2000年からはcDNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現プロファイリングによって,乳がんには多様なサブタイプが存在することがわかり,この概念は乳がん医療に大きな変化をもたらした.臨床現場においては,治療効果予測因子であるホルモン受容体の有無とHER2蛋白の過剰発現の有無,悪性度や増殖活性,さらには多遺伝子アッセイなどによって,内分泌療法,抗HER2療法,PARP阻害薬,免疫チェックポイント阻害薬,その他の分子標的療法薬などの適応が決定されるようになっている.
今後は層別化とともに個別化によってより適切な治療の選択が行われることとなる.増殖・転移機序の解明や新薬の開発,臨床試験などによって,耐性の克服,response-guide therapy,ゲノム医療,escalationとde-escalation治療,などが進歩し,さらなる治療成績の向上が期待されている.

キーワード
乳がん, サブタイプ, 層別化, 個別化, 多遺伝子アッセイ


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