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日外会誌. 123(4): 346-350, 2022


特集

医療訴訟のここがポイント―外科医にとって今必要な知識―

8.裁判官からみた外科手術と訴訟

中央大学法科大学院 

村田 渉

内容要旨
医療訴訟は,その解決に専門的知見を要することなどから,裁判官にとってもその審理・判断が困難な事件とされ,判決率の低さと和解率の高さが際立つ事件である.また,その判決における認容率(患者側勝訴率)は,通常訴訟事件に比して著しく低いが,その原因については更に分析・検討が必要である.
医療訴訟は,その特性として,①損害の公平な分担を基本理念とすること,②医療水準を含む注意義務等は法的概念であること,③情報の偏在があることを意識する必要があることを指摘でき,裁判官からみた外科手術の特徴として,①外科手術がどのように行われたか等に関する事実自体の確定が困難な場合があること,②医師の注意義務の特定が困難であり,注意義務違反の特定が概括的・抽象的にとどまる場合があることが挙げられる.
これらを受けて,医療訴訟では,立証の困難性など医療行為の特殊性を考慮し,患者側に対し,高度な専門的知見による証明を厳格には求めておらず,事案に応じて,過失の推定などの手法により,患者側における主張立証の負担の軽減が図られている.

キーワード
損害の公平な分担, 情報の偏在, 事実確定の困難性, 過失の推定, 外形的事実からの推認


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