[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (704KB) [全文PDFのみ会員限定]

日外会誌. 123(3): 234-239, 2022


特集

本邦の大腸癌治療の現状と展望―海外における標準治療と比較して

4.結腸癌の術前化学療法―その適応と功罪

新潟県立がんセンター新潟病院 消化器外科

丸山 聡 , 瀧井 康公 , 野上 仁

内容要旨
本邦における切除可能な進行結腸癌に対する現在の標準治療は,手術療法±術後補助化学療法であり,局所の進行が高度であっても切除可能と判断されれば,術前化学療法は標準的には行われない.一方,NCCNガイドラインでは術前に大きなリンパ節腫大を認める,あるいはcT4bと診断された局所進行結腸癌には,FOLFOX療法あるいはCAPEOX療法による術前化学療法を考慮すると記載されている.切除可能結腸癌に対する術前化学療法のエビデンスはまだ少なく,その適応や可否などは確立されていない.唯一のランダム化第Ⅲ相試験であるFOxTROT試験では,切除可能な進行結腸癌に対する術前化学療法の有効性は統計学的には立証できなかったが,有望な治療である可能性が示唆された.その結果を踏まえて,本邦でも標準治療では未だ十分な治療成績が得られていない「ハイリスク結腸癌」に対して,JCOG2006試験「切除可能な局所進行結腸癌に対する術前mFOLFOX6療法と術前FOLFOXIRI療法のランダム化第Ⅱ相試験」がスタートした.閉塞性大腸癌への対応や今後期待される術前免疫療法の新たな知見を加えて,切除可能結腸癌に対する術前化学療法の適応や治療レジメンなどに関して,本邦においてもエビデンスを構築していく必要がある.

キーワード
結腸癌, 術前化学療法, JCOG2006試験, 閉塞性大腸癌, 術前免疫療法


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。