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日外会誌. 111(6): 353-357, 2010
特集
消化器外科における栄養管理の現状と展望
4.高齢者における栄養管理のポイント
I.内容要旨
高齢者の栄養管理の最重要目標は,骨格筋量を維持して日常生活活動度の低下を防止することである.加齢に伴って総エネルギー消費量は低下し,65歳を超えるとその速度は増加する.
また,加齢に伴ってインスリン抵抗性が増大する一方,血中からの脂肪粒子の消失速度と脂肪の燃焼速度には高齢者と若年者の間で差を認めない.高齢者には,非蛋白熱源として脂質が糖質と比較してより好ましい.また,高齢者には骨格筋量を維持するため非高齢者よりやや多めの良質な蛋白質の摂取を勧める.
高齢者に対する総エネルギー投与量の決定には,簡易式20∼25kcal/kg/日を用いるのが一般的である.また,蛋白質は1.0∼1.2g/kg/日を投与し,非蛋白熱量に占める脂質の割合は非高齢者と同等とする.なお,野菜や果物には発癌のリスクを低下させる効果があるが,高齢者には癌の発生から臨床的に検知可能な癌に至るまでの時間は残されていない.高齢者にことさら野菜や果物の摂取を勧める意義は少ない.
高齢者の骨格筋量を保持,あるいは増強するために,必要に応じてリハビリテーションを併施する.また,どのような目的の入院であっても,安易な安静·臥床は慎むよう指導する.
医療行為や誤った食物の提供の継続などにより高齢者のADLを人為的に損ねることは回避されるべきである.本格的な高齢化社会を迎え,高齢者の栄養管理食や食に関する既存の概念を捨て去るべき時が来ている.
キーワード
高齢者, 栄養管理, サルコペニア, リハビリテーション
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