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日外会誌. 106(5): 352-356, 2005


外科学会会員のための企画

内視鏡手術―是か非か?

食道手術―是か非か?―胸腔鏡手術の妥当性―

大阪市立大学 大学院医学研究科消化器外科

大杉 治司 , 竹村 雅至 , 李 栄柱

I.内容要旨
胸部食道癌はT1b以深では,高頻度にかつ広範囲にリンパ節転移がみられるため,根治には広範なリンパ節郭清が必要である.この煩雑な手技が通常開胸下で安全に行われている本邦において,これを鏡視下で行うには根治性と利点が明確でなくてはならない.胸腔鏡下食道癌根治術の適応は,1)T1bからT3まで,2)右肺虚脱分離換気による麻酔が可能,3)広範な胸膜癒着がない症例である.アプローチには,ポートのみ,小開胸併用,用手補助などがあり,モニタも頭側に置く方法,対面して置き画像を互いに反転しeye-coordinationをえる方法などがある.いずれにしてもカメラ近接による拡大視効果という鏡視下の利点を活用することが肝要である.我々は良視野のもと,反回神経気管枝,食道枝,細動静脈,リンパ管,交感神経枝等を確認し切離している.手技習熟後は操作時間は通常開胸と同じで,出血量,術後呼吸器合併症,QOLの低下は有意に減少した.創縮小により肺活量の低下も有意に少なかった.進行度別にみた予後,再発形式にも差はなかった.以上より胸腔鏡下食道癌根治術は“是”と考える.しかし,我々は有効な習熟を得るのに36例を要した.胸腔鏡下食道癌根治術の標準化にはより一層の知識の共有と情報の公開が重要と思われる.

キーワード
胸腔鏡下食道癌根治術, 拡大視効果, 微細解剖, 習熟の重要性, 標準化


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