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日外会誌. 105(5): 334-338, 2004


特集

外科医のアイデンティティーをより高める

5.魅力ある外科医育成システムのあり方

東京慈恵会医科大学客員教授 

青木 照明

I.内容要旨
医学教育の基本的思想は,人格形成を含めた人間教育の一貫性と継続性を基本に,個々の人間と社会への奉仕精神とそのためのツールとしての技術の涵養にある.ツールはアートであり,医療においては医学すなわちサイエンスに基づくものでなければならない.特に外科臨床医療においは,医師としての人間は,他の個人に対して,治療目的とはいえ侵襲的行為をなすことを社会的・法律的に許容されうる唯一の存在であることを,謙虚にそして深く肝に銘じておくべきである.医学教育においては,学生・卒後初期臨床研修の時期から,人間として幅広く,人間全体として病める個体を“手当てする術”と“心”を養い,それが,洋の東西を問わず数千年を経て積み重ねられてきた,経験・実験そして臨床疫学(3つのEBM)に照らし正当な考え方と行為であることを常に証明しながら修練されねばならない.以上の目標達成のためには,十分な経験(experience based medicine)と実験に基づき(experiment based medicine)理論武装できる,そして最新の臨床疫学(evidence based medicine)を駆使できる指導者のもと,一定のカリキュラムにしたがって,具体的な到達目標を達成させるシステムが必要である.以上の基本理念のもとにわが国の外科専門医修練カリキュラムは改定され「魅力ある外科医育成システム」は緒についたばかりであるが,成否は医療関係者のみならず政・官・民・全体の理解と協力が必要であり,第3者機構としての「日本専門医認定制機構」の充実が望まれる.

キーワード
医学教育の一貫性, 卒後初期臨床教育, 外科専門医, 外科専門医修練カリキュラム, 日本専門医認定制機構


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