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日外会誌. 103(4): 343-347, 2002


特集

食道癌診療の現況と展望

3.食道癌の治療
2)右開胸手術

順天堂大学 医学部第1外科

梶山 美明 , 鶴丸 昌彦

I.内容要旨
食道癌のリンパ節転移率は他の消化器癌に比べ高率であり,リンパ節の転移部位は食道癌主病巣からの空間的距離に依存せず広範囲である.特に頸部から上縦隔にかけての反回神経周囲と胃上部近傍はリンパ節転移の好発部位であり1/3以上の症例でリンパ節転移が認められた.表在癌であるsm癌でもリンパ節転移率は47.0%と高率であり,上縦隔や胃上部へと広範囲にリンパ節転移が認められた.一方,術前のリンパ節転移診断は必ずしも正確ではなく,その誤診率は約20%にのぼり,現在の画像診断法の限界を示していると考えられた.食道癌の生物学的高悪性度と術前リンパ節転移診断の不確実さから現時点での食道癌に対する標準的手術は右開胸下の3領域リンパ節郭清手術であると考えられる.しかし,食道疾患研究会の食道癌登録集計からは,進行食道癌に対しても3領域リンパ節郭清手術が全国で一様に施行されているとは言えない結果であり,手術のQualityに施設問の格差が存在することが推測された.わが国はリンパ節郭清手術のEvidenceを得ることが困難な環境にあるが,食道癌に対する右開胸・リンパ節郭清手術の効果を発揮させるためには今後ともQualityの高い手術を行うことがわれわれの責務であると考える.

キーワード
胸部食道癌, 右開胸手術, リンパ節転移率, リンパ節郭清, リンパ節転移診断


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