[書誌情報] [全文PDF] (3132KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 102(6): 440-444, 2001


特集

リンパ節の癌転移病態と至適郭清

2.リンパ節の癌転移病態
2)形態学的な観察から

福島県立医科大学 医学部病理学第2講座

川口 隆憲

I.内容要旨
リンパ節転移は頻度が高くしばしば予後と関連する重要な転移であるが,なお良く理解されていない.本稿ではリンパ節転移の成立機序,宿主反応,癌進展における位置付けを簡単に記した.リンパ節転移はカドヘリン・カテニンなどの細胞接着分子を減弱した易解離性で運動能の高い癌細胞がリンパ管内に侵入することで開始される.これらの癌細胞は連続的,非連続的にリンパ節洞に達しその壁に接着することにより定着する.関わる接着分子としては癌細胞がインテグリン,CD44,糖鎖など,リンパ洞壁ではラミニン,ビアルロン酸,レクチンなどがあげられる.リンパ節内の進展には密な好銀線維を破壊する必要があり,matrix metalloproteinaseなどの蛋白質分解酵素が重要な役割を果たす.時としてリンパ節は癌に鋭く反応しリンパ濾胞過形成,類洞組織球症,リンパ球枯渇,線維化,血管新生などを示す.組織反応は癌を抑制するよう働いている可能性を示唆する一方で癌細胞の進展に有利な形質の獲得に関与している可能性もある.その見極めは現在のところできない.進行癌のリンパ節転移は他の臓器転移同様癌の個性が強く発揮されていると考えられる.

キーワード
リンパ節転移, 機序, 腫瘍プログレション


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。