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日外会誌. 99(11): 754-758, 1998


特集

臓器移植の今後の展望

4.肝移植

信州大学 医学部第1外科

橋倉 泰彦 , 川崎 誠治

I.内容要旨
国内では,1989年以来生体肝移植が700例以上に行われてきた.本稿では,生体肝移植に関する最近の動向ならびに原疾患からみた手術成績向上への対策について記述した.脳死肝移植が困難であるという制約の中で,国内での生体肝移植は徐々にその適応を拡大してきた.一つは劇症肝炎をはじめとする緊急症例への適応であり,もう一つは成人症例への適応である.特に成人生体肝移植においては,時としてグラフト容積が小さいことが問題となるため,症例によってはグラフトとして,尾状葉を含む左葉,または右葉が用いられている.また,B型肝硬変, C型肝硬変および肝細胞癌に対する肝移植について,術後再発を防ぐための対策について欧米で検討されている.B型肝硬変に対しては免疫グロブリンと抗ウイルス剤の投与,C型肝硬変に対してはインターフェロンと抗ウイルス剤の投与,また肝細胞癌に対しては適応の限定と抗癌剤の投与が成績の改善に貢献することが明らかにされてきたが,今後さらに検討が必要である.ウイルス性肝硬変や肝細胞癌が肝疾患の多くを占めるわが国においても,これらの疾患への対策の確立とともに,脳死肝移植が実施され,肝移植が欧米と同様に普及することが望まれる.

キーワード
生体肝移植, 脳死肝移植, 成人間生体肝移植, 肝硬変, 肝細胞癌


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