[書誌情報] [全文PDF] (2077KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 99(11): 759-764, 1998


特集

臓器移植の今後の展望

5.肺臓移植

東北大学加齢医学研究所 呼吸器再建研究分野

島田 和佳 , 近藤 丘 , 松村 輔二 , 岡田 克典 , 藤村 重文

I.内容要旨
肺移植は進行性・不可逆なびまん性肺疾患に対する治療として欧米においてはすでに確立されている.最近増加傾向は鈍化しているものの,世界各地で年間1,000例が施行され,すでに8,000例以上の症例が集積されている.一方,心肺移植はドナー不足の現状からその適応はかなり限定されてきている.
肺移植に関する問題点としては,移植後の肺水腫,拒絶反応の診断,慢性拒絶反応,小児に対する肺移植,肺保存,ドナー不足等があげられる.
移植後の肺水腫に関しては,再灌流障害と除神経の影響等から解明が進んでいる.拒絶反応の診断については,いまだ経気管支肺生検による組織診断が決め手であり,非侵襲的な診断方法は確立されていない.慢性拒絶反応のために生じると考えられている閉塞性細気管支炎についても,病態を再現する動物のモデルも確立しておらず,まだ対処法は確立していない.肺保存に関しては,今日までの研究で24時間程度の保存についてはめどが立ちつつある.小児に対する肺移植は,胸郭に適応したドナーが得られ難いこともあり,部分肺移植が主体になっていくだろう.ドナー不足に対する対策は,異種移植や心停止後の移植などが考えられているが,まだ異種移植については臨床応用には至っていない.一方,心停止後の移植に関しては,臨床的にも可能な段階となっている.
国際登録における肺移植の成績は,5年生存率50%程度であり,まだ改善の余地がある.今後の研究成果が待たれるところである.

キーワード
肺移植, 心肺移植, 生体部分肺移植, 心停止ドナー


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。