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日外会誌. 99(4): 245-250, 1998


特集

肝細胞癌外科治療の現況

系統的肝切除術におけるグリソン鞘樹の剪定

東京女子医科大学附属消化器病センター 

高﨑 健

I.内容要旨
肝腫瘍に対する肝切除に際し,門脈系の血管処理を動脈,門脈,胆管それぞれを個々に結紮切断するのではなく,それらが束となったグリソン鞘単位での処理を行ってゆく術式を行ってきた.門脈系脈管を肝外の肝十二指腸間膜部分を本幹とし肝内へ続くグリソン鞘樹として考えると三本の二次分枝が肝臓に分布する形である.一時分枝は全長が肝外にあり二次分枝の途中から肝内となる形である.肝内に入った二次分枝より三次分枝が枝分かれしてくるが,この分岐形態にはいろいろな形があり規則性を見い出しにくい.
一本の二次分枝の支配領域を区域単位として肝臓は3つの区域に分けられる.この他に一次分枝より直接栄養される尾状領域がある.
一つの区域内は更に三次分枝の分岐に従って6~8の区画単位に区分できる.1本の三次分枝により栄養される領域は肝表面に底辺を見せた垂形である.これらを区画単位とすると,それぞれの区域は6~8区画の集合体である.肝切除に際してはこれらのグリソン鞘樹のどの枝をどの位置で切断するかと言った枝の剪定作業である.
肝切除の基本は,3本の二次分枝のいづれかの一本を切断し,その領域を切除する区域切除である.区域切除より小さな手術は,二次分枝より分岐する三次分枝を選択的に腫瘍の大きさ,位置関係を考慮して切断してゆく区画切除である.
三次分枝の切断は最も縮小された手術では一本のみの切断という例もあるがまとめて何本かを一度に切断したり,隣り合った区域の三次分枝をそれぞれ何本か切断する形とかいろいろな形で選択的に切断すべき三次分枝の剪定が行われる.
現在までに834例の肝細胞癌に対してこの考えでの手術を行ってきており,大きな問題点はない.

キーワード
系統的肝切徐, 肝区域, 肝区画, グリゾン鞘一括処理


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