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日外会誌. 97(1): 43-48, 1996


特集

門脈圧亢進症に対する治療の現況

内視鏡的食道静脈瘤治療の現況
内視鏡的硬化療法

大分医科大学 第1外科

北野 正剛

I.内容要旨
食道静脈瘤に対する治療法はこの10年間で大きく様変わりしたと言える.すなわち,わが国の先達の工夫によりほぼ確立された直達術や選択的シャント術などの外科治療も折りから登場した内視鏡的硬化療法にとって代わられた.1980年代初頭にあっては硬化療法は急性出血の止血には有用であるものの長期的には再発再出血も頻繁でかつ合併症も少なからず報告されていたため外科施設での評価は極めて低いものであった.その後,内視鏡器機が改良されるとともに施行者の技術の向上と工夫の結果,長期の再発予防が可能となり現在の盛況をみるまでになった.急性出血時の手技の工夫としては硬化塞栓療法(高瀬),粘膜内外注入法(鈴木),ETP法(幕内)および筆者のオーバーチューブ法が挙げられる.
また,わが国では再発予防のためには硬化療法を継続し静脈瘤の完全消失ひいてはさらにもう一歩踏み込んだ食道粘膜完全消滅あるいは地固め法が有用であることが広く認められている.最も大切なことは定期的な内視鏡観察でありもし再発が起こりそうな所見あるいは小さな再発を認めた場合には即座に硬化療法の追加が行える体制作りと施行者の認識である.しかしながら,巨大食道静脈瘤症例や胃静脈瘤合併症例では硬化療法単独では難治でHassab手術の併用や肝機能良好例には一期的な手術療法も考慮すべきである.

キーワード
食道静脈瘤, 内視鏡的硬化療法


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