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日外会誌. 97(1): 49-54, 1996


特集

門脈圧亢進症に対する治療の現況

内視鏡的食道静脈瘤治療の現況
内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)

1) 東京慈恵会医科大学 内視鏡科教授
2) 東京慈恵会医科大学 内視鏡科

鈴木 博昭1) , 千葉井 基泰2) , 山本 学2) , 日野 昌力2)

I.内容要旨
内視鏡的硬化療法(EIS)は1980年頃を境にして食道胃静脈瘤の非手術的療法として脚光を浴びるようになり,硬化療法研究会が行ったアンケート調査ではEISをその第一選択の治療法として位置付けている施設が大多数であった.
一方,内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)はEISが有していた欠点(硬化剤による副作用や手技の繁雑さなど)を補う治療法として開発された.治療効果に関しては,その後の検討で,EISに遜色のないことが証明され,EVLを食道静脈瘤に対する第一選択の治療法として行っている施設も増加しつつある.
われわれは,両者の利点を生かすべくEVLとAS-EISの併用治療法を考案し,その臨床的効果を検討したところ,硬化剤使用量および治療回数が減少し,治療(荒廃)効果の向上が得られた.
食道静脈瘤,胃静脈瘤とも急性出血に対しては緊急内視鏡で出血点さえ正面視することができれば,EVLによる直接結紮法で,劇的な止血効果が得られる.
食道静脈瘤出血で例え出血点が正確に診断できない場合でも,螺旋状結紮法によるEVLを行えば,出血のコントロールが可能であることも述べた.
EVL+AS-EISで治療した214例中36例(16.8%)に再発がみられたが,EISの追加治療で容易い治療ができた.
EVL後の合併症として狭窄2例と治療後出血10例を経験したが,いずれも重篤なものではなく,全て,内視鏡的に治療し得る程度のものであった.
EVLは食道・胃静脈瘤急性出血の緊急止血法として,また,出血休止期の静脈瘤の治療法として,簡便かつ安全そして優れた治療効果を有する手技でありEVL単独あるいは他手技との併用の型で今後その臨床的価値が検討されるであろう.

キーワード
EVL, AS-EIS, 荒廃効果, 直接結紮法, 螺旋状結紮法


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