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日外会誌. 97(1): 36-42, 1996


特集

門脈圧亢進症に対する治療の現況

食道胃静脈瘤の治療適応
-予防的治療の適応について-

1) 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 外科
2) 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 第1外科

萩原 優1) , 岡野 亨2) , 中野 末広2) , 長岡 至朗2) , 長谷川 晃一郎2) , 山口 晋2)

I.内容要旨
食道胃静脈瘤の治療適応,特に予防的治療について自験例と文献的考察を行った.
自験例は静脈瘤全体では677例であり,自然経過を含めた予防的治療群は371例である.経過観察群は23%に静脈瘤破裂を認め,その内80%は追跡開始2年以内に発症した.予防的硬化療法群は171例で,これ等の内静脈瘤出血は12例7%であり,5年累積生存率は58%であった.直達術は50例で術後出血例は2例4%で5年累積生存率は59%であった.
本邦では予防的治療,特に内視鏡的硬化療法の適応に関しては是認されているが,欧米では必ずしも容認されていない.
欧米の自然経過群と予防的内視鏡的硬化療法のProspective Randomized Triall 15論文では,出血と生存率に関して優劣つけ難いのが現状である.
直達術は治療後の出血率は少ないが,生存率は内視鏡的硬化療法と変わらず,侵襲の面から適応は限られる.
予防敵内視鏡的硬化療法に適応に関しては本邦でもProspective Randomized Trialがおこなわれつつあり結果が待たれる.
食道胃静脈瘤に対する治療法も静脈瘤の病態により多様化し複数の科の医師により施行されている.今後も予防的治療も含めて治療適応はより安全で効果の高い方向へと向かいつつある疾患といえよう.

キーワード
食道胃静脈瘤, 予防的治療, 内視鏡的硬化療法, 直達術, 食道胃静脈瘤自然経過


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