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日外会誌. 95(12): 866-874, 1994


原著

胃切除後の膵内分泌部の形態学的変化に関する実験的研究

東京大学 医学部第3外科

沈 秀明

(1993年7月22日受付)

I.内容要旨
胃切除後の膵臓,特に膵内分泌部に如何なる形態学的変化が生じるかを調べた報告は特に見当たらない.そこで本論文では,胃切除ラットを用い, PAP法(ポリクローナル抗体使用)にてラ島B・A・D各細胞を染色し,胃切除後のラ島の形態学的変化を詳細に調べたので報告する.
膵内分泌部であるラ島は胃切除後萎縮を示す様になり,その面積は体重の変化と全く同様の変化を示した.糖質の消化吸収障害の結果ラ島は次第に萎縮していくものと思われる.
ラ島数,内分泌部重量,ラ島内B・A 各細胞数比・面積占拠率は,各群間に特に大きな差はみられなかったが,膵臓インスリン含有量は, EJ群で低下がみられた.
形態学的に最も顕著な変動を示したのはD細胞で,胃全摘群,特にEJ群(Totalgastrectomy,Esophagojejunostomy with Braun anastomosis)において,ラ島内D細胞面積占拠率3.57土1.64%,D細胞数比11.73土3.89%と増加を示した.またD細胞の増加が観察されたラ島においては,ラ島内細胞密度の減少が認められた.
胃切除ラットにおいては,ラ島内B・A細胞構造は比較的よく保持されていた.胃全摘ラット,特にEJ群においては,ラ島は一見糖の消化吸収障害による2次性前糖尿病状態にある様にみえるが, B細胞の荒廃はみられず, D細胞の増加がより顕著であった.胃全摘後の消化吸収障害,胃の喪失自体の影響,胃全摘後の消化管ホルモンの変動, intestinal transitの亢進等の影響を複雑に受けた結果,D細胞は代償性増加をきたしたものと思われる.

キーワード
胃切除ラット, 胃切除後膵内分泌部, ラ島の形態学的変化


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