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日外会誌. 95(12): 860-865, 1994


原著

進行胃癌に対する薬物的リンパ節郭清の評価

神奈川県立がんセンター 外科第3科

小林 理 , 小野寺 誠悟 , 利野 靖 , 奥川 保 , 岡田 賢三 , 西連寺 意勲 , 本橋 久彦

(1993年7月16日受付)

I.内容要旨
われわれは,進行胃癌切除例の遠隔成績を向上する目的で,転移リンパ節を標的にした術前化学療法を行った.方法は術前2~7日にaclarubicin 20mg吸着活性炭を胃癌周囲粘膜下層に内視鏡下で注入した.注入した活性炭は所属リンパ節に移行する.本法をわれわれは薬物的リンパ節郭清と名付けた.われわれの郭清は, R2を原則としている.その代わり,郭清しないリンパ節はaclarubicin吸着活性炭による薬物的リンパ節郭清を行った.今回は,組織学的リンパ節転移陽性胃癌治癒切除例の遠隔成績を薬物的リンパ節郭清の有無別生存率で検討した.その結果,薬物的リンパ節郭清47例(CH群)の累積5年生存率(5生率)は60%で非薬物的リンパ節郭清126例(対照群)の48%よりも有意に高かった.リンパ節群別転移程度のn1(+)やn2 (+)例の5生率はCH群と対照群間に有意差はなかったが,n3 (+)以上例はCH群が有意に高かった.幽門下リンパ節(⑥)転移例の5生率は対照群38%に対してCH群は57%と有意に高かった.⑥からは第3群や大動脈周囲リンパ節(⑯)に向かう豊富なリンパ流が確認されている.R3以上 (R2+α) 郭清例はCH群と対照群間に生存率の差を認めなかったのに対してR2郭清例はCH群の生存率が対照群よりも有意に高かった.n3 (+) 以上例やR2郭清例に薬物的リンパ節郭清効果を認めたことは,第3群や⑯リンパ節の微小転移巣に対する抗癌効果が示唆された.薬物的リンパ節郭清の適応は進行胃癌,特に下部癌に対してR2を行う場合や系統的R3以上の郭清が必要なn3 (+) 以上例に対してR2+αの郭清を行う時である.

キーワード
胃癌, リンパ節転移, 活性炭, 薬物的リンパ節郭清


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