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日外会誌. 95(9): 643-654, 1994


原著

上部食道括約筋機能における反回神経および食道壁内神経叢の関与に関する実験的研究

大阪市立大学 医学部第2外科

福長 洋介 , 東野 正幸 , 大杉 治司 , 徳原 太豪 , 木下 博明

(1993年4月12日受付)

I.内容要旨
上縦隔リンパ節郭清を伴う胸部食道癌術後の上部食道括約筋(UES)機能低下と反回神経との関連を実験的に検討した.雑種成犬10頭をそれぞれ無処置時(C群),左反回神経切断後(L群),両側反回神経切断後(B群),さらにUESより肛門側7cmの食道で離断吻合後(T群)の4群に分け,これら各群(延べ40頭)を対象とし,以下の条件下に食道内圧測定を行った.すなわち,1)UESの肛門側5cm,10cmの頸部食道でバルーン拡張刺激を加えた時,2)UESの肛門側10cmの頸部食道に0.1N HClあるいは0.1N NaOHを滴下した時,のUES圧(UESP)について検討した.なお,食道内圧測定には,全周性に圧を感受するMicrotip型圧transducer(CCTセンサー,Gaeltec社製)を使用した.非刺激時UESP(C群32.9,L群30.0,B群30.2,T群29.3mmHg)は4群間に有意差はなかった.バルーン拡張刺激時には,すべての群でUESPは非刺激時に比し有意に上昇した.各群間で比較するとL群,B群,T群のUESPは各バルーン径,各バルーン拡張位置のいずれにおいてもC群に比して有意に低かった.また,UESの肛門側10cmでのバルーン拡張時,T群のUESPはB群に比し有意に低かった.酸刺激では,C群のUESPは経時的に有意に上昇したが,L群,B群,T群ではUESPの経時的な上昇はみられなかった.アルカリ刺激では,C群,L群のUESPは経時的に有意に上昇したが,B群,T群ではUESPの経時的な上昇はみられなかった.以上より,非刺激時UES機能には反回神経は関与しなかったが,反回神経はバルーン拡張刺激に対するUES収縮反応の求心反射経路であり,これには食道壁内経路も関与していた.また,反回神経は酸あるいはアルカリ刺激に対するUES収縮反応の求心反射経路でもあることが示唆された.

キーワード
上部食道括約筋(UES), 食道内圧測定, 反回神経麻痺, 頚部食道離断


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