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日外会誌. 95(9): 636-642, 1994


原著

放射線増感剤の食道腔内投与を併用した食道癌放射線療法に関する実験的研究

神戸大学 医学部第1外科学教室

生田 肇 , 浜辺 豊 , 斎藤 洋一

(1993年4月6日受付)

I.内容要旨
食道癌の放射線療法に際し,食道腔内に放射線増感剤を粘膜吸収促進剤と共に注入し,腫瘍及び転移リンパ節へ高濃度に移行させることにより照射効果を高め得ることを実験的に確認できたので報告する.
家兎VX2食道癌モデルに放射線増感剤として5-bromo-2’-deoxyuridine(BUdR)100mgをリノール酸とタールコール酸による脂質界面活性剤混合ミセル(MM)と共に食道腔内に投与する方法で,投与後の腫瘍細胞内への取り込みを酵素抗体法で染色し,さらに,60Co照射後の抗腫瘍効果を組織学的に判定した.腫瘍細胞内への取り込みはBUdR静注群,BUdR点滴静注群に比して,MM使用の食道腔内投与群では食道原発巣が50.9±9.4%(Mean±S.D., n=7),リンパ節転移巣が38.0±12.1%と高率に取り込まれていた.組織学的照射効果は照射単独では5Gy(n=5)で食道癌取扱い規約の組織学的効果判定基準でのGradelb以上の有効例はなく,10~15Gy(n=6)で原発巣とリンパ節転移巣でともに有効例が33.3%であったのに対し,BUdR 100mg+MM食道腔内投与群では5Gy(n=10)でそれぞれ有効例が60.0%,41.7%,さらに10Gy(n=5)で100%,75.0%と腫瘍効果の増強が認められた.以上,本投与法により放射線増感剤BUdRを標的細胞に高濃度に移行させ,照射によるすぐれた抗腫瘍効果が得られ臨床応用も可能と考えられた.

キーワード
食道癌放射線療法, 放射線増感剤, 5-bromo-2’-deoxyuridine (BUdR), 脂質界面活性剤混合ミセル, VX 2腫瘍


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