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日外会誌. 94(12): 1256-1262, 1993


原著

D-Galactosamine肝障害ラットにおけるエンドトキシン不活化能

名古屋大学 医学部第2外科(指導:高木 弘教授)

滝 茂実 , 中尾 昭公

(1992年5月30日受付)

I.内容要旨
肝不全状態におけるエンドトキシンの動態を明らかにするため, D-Galactosamine投与による肝障害ラットモデルを作成し実験的に検討した. in vivo実験として,ラット大腿静脈より各種濃度のエンドトキシンを静注し,血中エンドトキシン値を経時的に測定して血中エンドトキシンの消失率を求めた.更にin vitro実験として,血漿1mlにin vivo実験に相当する各種濃度のエンドトキシンを添加し,37℃でincubationして血漿中のエンドトキシン値を経時的に測定し,血漿中におけるエンドトキシン消失率を求めた.更にエンドトキシン静注後に肝組織を摘出し,エンドトキシンに特異的に反応するカブトガニ血球ライセート中のFactor Cを用いて免疫組織化学染色を施行し,肝におけるエンドトキシンの局在を検討した. エンドトキシン静注前の血中エンドトキシン値は対照群およびD-Galactosamine肝障害群とも正常範囲内であった. in vivo実験で, D-Galactosamine肝障害群の血中エンドトキシン値は対照群に比較し有意に高値となり,エンドトキシン消失率も有意に低値であった.in vitro実験では, D-Galactosamine肝障害群は対照群に比較し有意に高値であったが,エンドトキシンの血漿中添加量が増えるにつれ両群の間に消失率の有意差はなくなった.対照群はエンドトキシン1mg/kg静注10分後,肝類洞壁内皮細胞にエンドトキシンが染色された. 1時間後はクッパー細胞,肝細胞にも染色されたが, D-Galactosamine肝障害群は10分, 1時間後も全く染色されなかった.D-Galactosamine肝障害ラットではエンドトキシン血症は認められなかったが,血漿中のエンドトキシン不活化能と肝でのエンドトキシン処理の低下によりエンドトキシン血症が出現し易いと推察された.

キーワード
D-Galactosamine, 肝不全, エンドトキシン不活化能, 免疫組織化学染色


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