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日外会誌. 94(8): 809-815, 1993


原著

閉塞性黄疸解除後の黄疸遷延化因子としてのエンドトキシン血症に関する実験的検討

防衛医科大学校 第1外科学教室

出井 雄幸

(1992年4月23日受付)

I.内容要旨
閉塞性黄疸(以下閉黄)に対し黄疸軽減術(以下減黄術)を施行したにもかかわらず,黄疸が遷延することがある.この黄疸遷延化因子のひとつとしてエンドトキシン (以下ET) を想定し実験的検討を行った.ラットに静脈注入路2ルートと胆管外瘻カテーテルを挿入し,胆管外瘻カテーテルを閉塞・開放することにより,閉黄とその減黄術のモデルとした. 72時間の閉黄期間中生理食塩水 (以下生食) を静注した群の血清総ビリルビン値 (以下T.Bil) は6.76±0.71mg/dl, ETを微量持続静注 (6.0μg/hr/100g) した群の同値は10.48±1.54mg/dlで有意差(p<0.01)を認めた.閉黄解除後7.5時間のT.Bilは生食静注群では0.48±0.18mg/dl, 閉黄時のみETを微量持続静注した群では1.90±0.18mg/dl,減黄時のみETを微量持続静注した群では3.41±1.13mg/dlと,特に減黄時のET血症は減黄を阻害した(p<0.01).一方減黄時ETとursodeoxycholic acid(以下UDCA)10mg/hr/100g BWを,別ルートから同時に持続静注した群の T. Bilは2.80±1.28mg/dl,減黄時methylpredonisolone (以下MP) 3mg/同静注後ETを持続静注した群では1.18±0.50mg/dlと,ET血症に対しUDCAの投与は減黄の有意な促進を示さなかったが, MPは減黄を有意(p<0.01)に改善した.また減黄時ET静注は胆汁排泄量を著明に低下させたが,このETの作用に対しUDCAは胆汁排泄量を著明に改善するものの,胆汁中のビリルビン濃度は低いためビリルビン排泄量は軽度増加にとどまった.しかしMPは胆汁排泄量の改善傾向とビリルビン排泄量の増加傾向を示した.このようにETは閉黄時に黄疸を増悪し,減黄時は胆汁排泄量を低下させて黄疸を遷延し,これに対しUDCAは胆汁排泄量を改善するものの減黄を促進しないがMPは減黄を改善させる傾向を示すことなどを実験的に確かめた. ETの減黄阻害作用は, ETあるいはこれに関連する各種因子による胆汁鬱滞や肝細胞障害によるものと推察された.

キーワード
閉塞性黄疸, 黄疸遷延化因子, エンドトキシン, ursodeoxycholic acid, 副腎皮質ステロイド


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