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日外会誌. 94(8): 801-808, 1993


原著

移植肝拒絶反応判定における末梢血単核球 DNA 分析の意義

奈良県立医科大学 第1外科

瀧 順一郎 , 中島 祥介 , 久永 倫聖 , 金廣 裕道 , 中野 博重

(1992年4月13日受付)

I.内容要旨
末梢血単核球のDNA量をFlow cytometryを用いて分析し, DNA合成,分裂期に当たるSG2M%を測定することにより移植肝拒絶反応の早期判定の指標となり得るかどうか検討した.
犬同所性同種肝移植をモデルとして,I群:免疫抑制剤非投与群(n=5), II群:免疫抑制剤投与群 (n=10), Cyclosporine (CsA) (n=6), FK506 (n=4)について, Propidium iodideにより核DNA染色を行いFACScanを用いてDNAヒストグラムの分析を行った.
I群では,移植前10.2±0.6% (mean±SE) であったSG2M%は移植後5~6日目には15.6±0.7%と有意に上昇した(p<0.01). SG2M%上昇時の肝生検では門脈域の細胞浸潤を認め急性拒絶反応 (mild rejection) と診断した.このSG2M%の上昇と組織学的変化は,血液生化学的検査により肝障害が示される時期より1~2日早期であった.
II群において,拒絶を回避し得た例 (n=4) では, SG2M%は3.8±1.1%と前値 (8.8±0.6%) に比して有意に低下し (p<0.05) 低値を持続し,肺炎等の合併例においても上昇は認めなかった.拒絶を呈した例 (n=6) では,移植後低値を示していたSG2M%は生化学的検査の異常に先行して13.6±1.3%と上昇した (p<0.01).肝生検にて拒絶反応 (mild rejection) と診断し,ステロイドパルス療法を施行したところ, 4例において肝生検における門脈域の細胞浸潤の明らかな減少を確認すると共にSG2M%は低下を示した (5.6±0.7%) (p<0.01).
以上より末梢血単核球DNA分析によるSG2M%の推移は,移植肝拒絶反応の鋭敏な早期指標と成り得ると同時に治療効果の判定に有効であることが示唆された.

キーワード
肝移植, 拒絶反応, DNA 分析, SG2M%


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