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日外会誌. 94(4): 424-426, 1993


症例報告

特発性左外腸骨静脈破裂の一治験例

国立南九州中央病院 心臓血管外科
*) 国立南九州中央病院 外科

西田 聖剛 , 有川 和宏 , 山下 正文 , 川島 淳宏 , 潮田 和人*) , 田畑 伝次郎*)

(1991年8月8日受付)

I.内容要旨
静脈破裂は外傷性に発症する他は, 静脈瘤の存在, 動脈瘤による圧迫, 悪性腫瘍の浸潤などにより起こり得る.これらの誘因なく, 特発性に発症した極めて稀な左外腸骨静脈破裂の一例を経験したので若干の考察を加えて報告する.症例は80歳の女性で, 早朝トイレでショック状態で発見された.左下腹部の膨隆と圧痛があり, CT検査で左後腹膜腔に大量の血腫と左大腿静脈内の血栓閉塞が示唆された.左内腸骨動脈領域の動脈瘤破裂の診断下に開腹した.左後腹膜腔は大量の血腫で占められていたが動脈に出血性病変はなかった.血腫除去を進めると左外腸骨静脈前面に縦方向約2cmの裂開が発見された.裂開口を介し内部に連続する新鮮な血栓が存在し, これを除去し静脈壁を修復した.周囲組織に異常病変はみられなかった.後術経過に問題はなかった.特発性静脈破裂の原因として, 慢性的な負荷により脆弱化した静脈壁の存在が基礎にあり, これに何らかの瞬間的な静脈内圧亢進が加わり破裂に至るものと考えられた.特発性腸骨静脈破裂の報告は文献上欧米で12例あり, 本邦では本症例が第1例目と考えられる.

キーワード
特発性腸骨静脈破裂, 出血性ショック, 静脈血栓


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