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日外会誌. 93(10): 1330-1336, 1992


原著

超音波検査法による乳癌の胸骨旁リンパ節転移の術前診断

神戸市立中央市民病院 第1外科

小西 豊 , 橋本 隆 , 奥野 敏隆 , 高峰 義和 , 谷 友彦 , 梶原 建熈

(1991年6月4日受付)

I.内容要旨
胸骨旁リンパ節の所在するinternal mammary area (I.M.A.) は,超音波検査(US)の胸骨縁に沿う矢状走査で肋骨影の後方に帯状の低エコー像として抽出され,また肋間での水平走査では胸骨影の後縁外側に,紡錘形または三角形の低エコー像として抽出された.
この正常US所見を基に,第一から第三肋間でのI.M.A.の所見を矢状または水平走査のどちらかでI.M.A. に腫瘤像を認めるPattern-A, I.M.A. の開大を示すPattern-B,そして正常のPattern-Cの3型に分類した.
そこで,胸骨旁リンパ節郭清の施行された乳癌81例とこれらの第一から第三肋間の243肋間を対象に,術前のUSによる胸骨旁リンパ節転移の診断能について検討し,以下の結果を得た.
Pattern-Aを示した14肋間中12肋間(85.7%),Pattern-B 40肋間中14肋間(35%)で,組織学的にリンパ節転移を認めた.これに対しPattern-C189肋間では,転移は1肋間(0.5%) にのみ認められた. Sensitivity,specificityそしてoverall accuracyは96.3%,87%そして88.1%であった.
症例でみると,少なくとも1つのPattern-Aを認めた10例中9例(90%)に, Pattern-BとPattern-Cからなる19例中12例(63.2%)でリンパ節転移を認められたのに対し,すべてPattern-Cの52例は全例リンパ節転移を認めなかった.症例でのsensitivity, specificity,overall accuracyは100%,86.7%そして90.1%であった.
以上の結果は,従来行われてきたシンチグラフィー, CTの診断能をしのぐものであり,胸骨旁リンパ節転移の診断にUSは有用であった.したがって,胸骨旁リンバ節郭清の適応にあたって, USの導入が望まれた.

キーワード
乳癌, 胸骨旁リンパ節, 超音波検査


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