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日外会誌. 93(10): 1324-1329, 1992


原著

膵癌細胞に対する温熱療法の効果
―flow cytometry による BrdUrd/DNA 同時解析を含めた種々の検討―

大阪市立大学 医学部第1外科

仲田 文造 , 鄭 容錫 , 澤田 鉄二 , 横松 秀明 , 田中 肇 , 佐竹 克介 , 曽和 融生

(1991年6月21日受付)

I.内容要旨
膵癌に対する温熱療法は,臨床において集学的治療の1つとして用いられており,その有用性が期待されているが,基礎的な研究の報告は少ない.本論文では,膵癌細胞に対する温熱療法の効果を,細胞動態を含めた種々の方法にて検討した.
膵癌培養細胞株Capan-2,RWP-1細胞に対する生細胞数の増加抑制,細胞の形態変化からみて, 43℃以上の温熱の有用性が認められた.培養上清中の糖鎖抗原SPan-1およびCA19-9の測定値でも,43℃の温熱により,膵癌細胞による産生が抑制されており,この温熱の有用性が示された.nude mouse皮下移植細胞の増殖では43℃の温熱では腫瘤形成を3週目で認めるが,対照に比べ成長は遅かった.さらに, 44℃では腫瘤の形成を全く認めず,長期の観察では43℃の温熱の有用性が示されるとともに,より強力な温熱の効果は44℃以上が望まれた.
flow cytometryを用いた, BrdUrd/DNA同時解析により細胞動態を解析した結果, 43℃までの温熱では,処理温度の上昇につれG2M期の蓄積が強くなり,また, BrdUrdのS期細胞への取り込み量が低下していったが, 44℃以上でS期の細胞のBrdUrdの取り込み量が極めて低下し,細胞回転全体の停止がみられた.このことはnude mouse皮下移植細胞の結果を説明するものと思われた.
以上より,膵癌細胞に対する温熱の細胞動態に及ぼす影響をはじめとする種々の検討から,温熱療法の有用性と, 44℃以上の温熱の強力な効果が示唆された.

キーワード
膵癌, 温熱療法, 細胞動態, フローサイトメトリー, bromodeoxyuridine/DNA 同時解析


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