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日外会誌. 93(7): 684-690, 1992


原著

腹部多臓器移植における形態学的拒絶反応の臓器間較差

1) 鹿児島大学 医学部第2外科
2) 鹿児島大学 医学部第1病理

山内 励1) , 浜田 信男1) , 熊谷 輝雄1) , 生駒  明1) , 田中 紘輝1) , 平 明1) , 吉田 浩己2)

(1991年5月20日受付)

I.内容要旨
ブタを用いて肝,膵および胃から大腸までの全消化管を含む腹部多臓器グラフトをen blocに同所性同種移植し,移植臓器間の拒絶反応の較差を組織学的に検索した.体重15~25kgのブタ10組を用いて移植を行い, 8例を検索しえた.免疫抑制剤は投与しなかった.移植後生存日数は7, 8, 11, 14,18, 21日で移植臓器の拒絶反応の程度を病理組織学的に分類した.すなわち肝は5段階に,膵,消化管を4段階に分けた.肝,小腸の組織学的変化は単独移植例の所見と同ーで,移植10日目以降に拒絶反応による変化が顕著となった.組織学的変化は小腸,大腸に高度で,肝,胃,膵の順に軽度となる傾向にあった. 21日生存例での移植各臓器の拒絶反応は空腸,回腸,結腸がgrade III, 十二指腸,直腸がgrade II, 胃,肝がgrade I, 膵がgrade ND (nondiagenostic) と明らかな差を認めた.
以上の結果より,腹部多臓器移植において拒絶反応に対する臓器特異的な較差の存在が示唆された.

キーワード
腹部多臓器移植, 移植免疫, 拒絶反応, 病理組織学


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