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日外会誌. 93(3): 266-273, 1992


原著

抗CEA モノクローナル抗体を用いた大腸癌の画像診断
-第2報 モノクローナル抗体 CEA102のwhole IgG と F(ab’)2の比較-

1) 名古屋大学 医学部第2外科
2) 名古屋大学 医学部放射線科
3) 愛知県がんセンター 消化器外科
4) 国立名古屋病院 外科

和田 喜美夫1) , 渡辺 正1) , 田所 匡典2) , 坂本 純一3) , 村山 浩基4) , 佐久間 貞行2) , 高木 弘1)

(1991年1月14日受付)

I.内容要旨
腫瘍の画像診断に癌関連抗原に対するモノクローナル抗体を応用することは,抗原抗体反応という特異的な反応を利用するため,癌の質的診断に有用と考えられる.しかしながら画像のQuality,副作用の発現,診断に時間を要する,などの多くの問題が解決される必要がある.これらの問題を解決し一般検査として確立するために,抗体のフラグメントの使用,核種の選択,診断用機器の開発など多くの面から検討がなされてきた.今回特に抗体のフラグメントの有用性を検討するために,抗CEAモノクローナル抗体CEA102のF(ab)2を作製し,その体内動態,および画像への影響についてwhole lgGと比較検討した.大腸癌移植ヌードマウスの腹腔内に125I標識lgGおよびF(ab')2を約185KBg投与し,経日的に各臓器の放射活性を測定した結果,血中クリアランスはF(ab')2はwhole lgGより約2倍早く,また腫瘍/血液比は,whole lgGが6から7日目に1を越えたのに対し, F(ab')2は2から3日目であった. FCRを用いた画像診断においても, F(ab')2投与群は, 3日目にバックグランドのない腫瘍陰影を得ることができた.
次に臨床例においては, whole lgG投与では3日目に明瞭な画像が得られたのに対し, F(ab')2投与ではすでに1日目に明瞭な画像が得られた.放射活性をROIにて検討すると, whole IgGを投与した症例では,腫瘍/正常比が3日目に最も高く1.29を示したのに対し, F(ab')2投与例では1日目が最も高く2.01を示し,画像上の変化と一致していた.以上よりF(ab')2は,腫瘍への集積率を高め,血中のクリアランスを早めるため,半減期の短い123I, およびTc-99mなどの核種の使用を可能にし,診断時間の短縮に役立つと考えられるため,一般検査として確立する上で最も重要な要素と思われる.

キーワード
大腸癌, 画像診断, モノクローナル抗体, CEA, F (ab')2 フラグメント


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