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日外会誌. 93(3): 257-265, 1992


原著

イヌ虚血性腸管病変の走査電顕的研究

東京医科歯科大学 第2外科(主任:三島好雄教授)

清松 瑤一郎

(1991年1月23日受付)

I.内容要旨
虚血性腸疾患にみられる粘膜の形態的変化を観察するため,成犬において腸間膜動脈の小分枝からマイクロバリウムを注入して腸管壁内の微小循環系を閉塞した.
注入バリウム量の多寡に応じて,粘膜の血管,粘膜下層の血管,さらに筋層の血管閉塞がみられたが, これらは粘膜血流量の変動とよく相関し, また,その後の腸管虚血の経過は,一過性型,狭窄形成型,壊死型虚血性腸病変に区別された.
一過性病変では,粘膜変化は主として絨毛上皮に限られたが,狭窄形成型及び壊死型では,上皮下層以下の変化が顕著であり, coreの萎縮ー壊死ー消失,および筋層の変性一壊死にいたる各段階の変化がみられた.
走査電顕による3次元的観察では,一過性型では軽微な微小循環障害によって絨毛頂部から幹部に向かう上皮剥離がおこり,同時に,絨毛は細化,短縮し,その表面の凸凹が顕著となった.狭窄形成型および壊死型においては絨毛上皮が剥脱してcoreが露出し,さらに重度の血行障害では急激に全絨毛およびcoreの壊死がみとめられた.
一過性型では,早期から陰腐より再生した絨毛上皮がcoreの全周を覆いつつ頂部に向かって規則正しく伸張する修復過程を示したが,狭窄形成型では上皮の再生開始時期は大幅に遅延し,大小不揃いな細胞が, coreの所々に露出箇所を残しながら頂部に向かって緩徐な伸長をとげた.また,再生上皮によるcoreの被覆完了後に,一過性型で杯細胞の出現を認めたが,狭窄形成型では3カ月間の観察期問内に杯細胞の出現をみとめなかった.再生絨毛の形状は,一過性型では,太さ,高さ,密度とも旧に復した.しかし,狭窄形成型では再生絨毛は細く,密度は疎であった.

キーワード
虚血性疾患, 走査電子顕微鏡, 絨毛上皮再生


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