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日外会誌. 93(1): 81-85, 1992


原著

乳癌における術中支配動脈,還流静脈血中 tissue polypeptide antigen 測定の意義
―術後再発との関連―

1) 信州大学 医学部第2外科
2) 飯田市立病院 外科
3) 岡谷塩嶺病院 外科

小松 誠1) , 千賀 脩2) , 花村 直3) , 藤森 実1) , 小林 信や1) , 菅谷 昭1) , 飯田 太1)

(1990年11月20日受付)

I.内容要旨
初発乳癌症例73例について,術中より末梢静脈に加え,支配動脈,還流静脈よりの血中tissue polypeptide antigen(TPA)値の測定を行い,各Stage毎に末梢静脈血中TPA(v-TPA),支配動脈血中TPA(A-TPA),還流静脈血中TPA(V-TPA), 還流静脈血中TPAと支配動脈血中TPAの較差(V-ATPA)の実測値および陽性率と術後再発との関連について検討した. v-TPA, A-TPA, V-TPA,V-ATPAともに, Stageの進行に伴い,上昇する傾向が認められた. A-TPAはほぼv-TPAに一致する値を示した. V-TPAはA-TPAに比較し高値であり, StageII, Stage IIIでは両者間に有意差を認めた(p<0.05).各Stage毎に,再発例は非再発例に比較すると,ほぼどのパラメーターも高値となる傾向が認められた. v-TPA, A-TPA及びV-TPAは110U/L以上を, V-A TPAは30U/L以上を各々陽性とした場合,いずれのパラメーターにおいても,陽性例は陰性例に比較し,その再発率は高い領向にあり,特にStage IIにおいて, V-A TPA陽性例の再発率は陰性例に比較し有意に高値であった(p<0.05).癌細胞で産生され静脈へ移行したTPAを直接反映する因子と考えられるV-A TPA 30U/L以上の症例については,再発の可能性を考え,術後厳重なfollow upが必要と考えられる.

キーワード
乳癌, tissue polypeptide antigen (TPA), 術後再発, 還流静脈血中 TPA と支配動脈血中 TPA 較差


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