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日外会誌. 93(1): 62-70, 1992


原著

犬部分自家移植膵の内分泌細胞の量的変動および,その超微細構造について

京都大学 医学部第1外科
*) 京都大学 医療短期大学部
**) 京都大学 医学部第1病理

加治 弘 , 井上 一知 , 尹 光俊 , 内田 耕太郎*) , 杉山 武敏**) , 戸部 隆吉

(1990年11月22日受付)

I.内容要旨
移植膵における内分泌細胞の量的および質的変化を調べるため, レシピエントの免疫機構や膵毒性のあるといわれる免疫抑制剤の影響を受けない犬自家移植膵において,免疫組織化学的手法と電子顕微鏡を用いてそれらを経時的に観察した.犬の膵左葉を左腸骨窩において脾動静脈を腸骨動静脈に血管吻合し,自家移植を行い,膵管は腹腔内開放とした.膵生検と経静脈的ブドウ糖負荷試験(IVGTT)を経時的に行い,術後14週までの変化を観察した.線維化が術後3週目に観察され, しだいに進行していった. B細胞比は術後3週目に有意に減少し, 14週まで有意な減少を続けた(p<0.01).しかしA細胞比やD細胞比は14週後まで減少傾向は示したものの,有意な変化ではなかった.電子顕微鏡による観察においては,移植後3週目にコラーゲン束の増加とともにB細胞の脱顆粒がみられた. 7週目にはコラーゲン束の増量,脱顆粒したB細胞の増加とともに細胞質の電子密度の上昇したB細胞(暗調細胞)が観察された.これらはいずれもB細胞の変性を示すものと考えられた.一方, A細胞やD細胞には脱顆粒などの著明な変化は認められなかった.しかし14週目には脱顆粒したB細胞にまざって幼若なB細胞の集団が観察された.また,耐糖能の変化については, 7週後にK値がコントロール群に比べて有意に低下し(p<0.05), さらに11週後にはK値の有意な低下に(p<0.01)加え,ΣBS (総血糖反応量)の増加(p<0.01) がみられた.しかし14 週後にはK 値は増加し,ΣBS は減少し, コントロール群との有意差は認められなかった.これは自家移植後14週目には耐糖能が回復していることを示唆しており,電子顕微鏡で14週後の膵で観察された幼若なB細胞が関与している可能性も否定できない.

キーワード
膵自家移植, B細胞, 超微細構造, 免疫組織化学, K値


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