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日外会誌. 93(1): 43-51, 1992


原著

31P 及び23Na MRSpectroscopy を用いた保存・再灌流後の摘出肝機能評価

1) 東北大学 医学部第2外科
2) 大塚製薬徳島研究所 

織井 崇1) , 大河内 信弘1) , 里見 進1) , 田口 喜雄1) , 森 昌造1) , 三浦 巌2)

(1991年11月13日受付)

I.内容要旨
uw液中で冷却保存,再灌流したラット肝の機能傷害を, 31P-MRSおよび23Na-MRSを用いて,糖代謝及び細胞膜機能の面から評価した. WKY雄性ラットを用い,肝臓を乳酸リンゲル液でwash outして, 4℃のUW液中に24時間及び48時間単純浸漬保存した. 31P-MRSにて保存再灌流後のβ-ATPとPiを測定し,ミトコンドリアの機能を評価し,加えて以下の実験を行った.糖代謝機能の評価: 10mM fructoseを負荷して,肝での代謝によって生成されるfructose-1-phosphate(F-1-P)と,その際エネルギー源となるATPの量的変化を31P-MRSにて測定し,その代謝傷害を評価した.細胞膜機能の評価: Ammonia Pre-pulse法に基き, 50mM NH4Clを負荷して細胞内を酸性化し,その後の細胞内pHとNaの変化を, 31 P-MRS及び 23 Na-MRSを用いて測定することによって, Na + -H + exchange及びNa + -K + exchangeといったイオンの交換の面から細胞膜の機能を評価した.再灌流時のβ-ATP/Piは,対照群, 24時間群, 48時間群で各々1.04±0.28, 1.07±0.26, 0.46±0.08で, 48時間群で有意に低値であった. fructoseを負荷するとF-1-Pは増加する.対照群, 24時間群では有意差なく経過するが, 48時間群ではそのピーク値が対照群の約1/2までにしかならなかった. ATPの利用率も48時間群で低値であった. NH4Clの負荷を中止すると,細胞内が酸性化されるが,徐々に回復し,それと同時に細胞内Naが増加する.一旦増加した細胞内Naも時間と共に回復するが,その回復は,24時間群で対照群より有意に悪く,48時間群になると,本実験時間内では減少傾向を示さなかった.これらの実験結果から, UW液中に保存すると,ミトコンドリア機能であるATP産生能や,細胞質の機能である糖代謝能は, 24時間保存でも十分に保たれるが,細胞膜機能は24時間保存には耐えられないと考えられた.

キーワード
肝移植, 保存肝機能, MRS, フルクトース代謝, 肝細胞膜機能


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