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日外会誌. 93(1): 36-42, 1992


原著

閉塞性黄疸ラット肝におけるインスリンおよびグルカゴンレセプターの変動

岡山大学 医学部第1外科(主任:折田薫三教授)

酒井 弘典

(1990年10月29日受付)

I.内容要旨
閉塞性黄疸時の肝実質障害に由来する肝内糖代謝異常の機序を明らかにするため,糖代謝を制御するホルモンであるインスリンおよびグルカゴンの血中濃度と,それらの作用発現の第一歩となる肝細胞膜のインスリンおよびグルカゴンレセプターの特異結合能の変動をラットを用いて検討した.
血中immunoreactive insulin (以下IRI)は,対照群,黄疸群ともsham operation, 胆管結紮後1~4週の間平均14.1~19.3μu/mlの範囲にあり有意差はなかった.
血中immunoreactive glucagon (以下IRG)は,対照群が平均27.6~38.5pg/mlの範囲であるのに対して,黄疸群では黄疸1週目より149.3±89.69pg/mlと有意(p<0.05)に上昇し,黄疸2週目には236.9±187.31pg/ml黄疸4週目には1,088.0±741.50pg/mlと週をおうごとに著明に上昇した.
インスリンレセプター特異結合能は,黄疸1週目では変化しなかったが, 2週目(対照群39.7±5.12%, 黄疸群35.2±3.32%)および4週目(対照群38.4±3.85%,黄疸群32.3±4.62%)で軽度(p<0.05)低下した. Scatchard解析よりこの低下は黄疸2週目では親和性の低下が,黄疸4週目ではレセプター数の低下が原因であった.グルカゴンレセプター特異結合能は,黄疸1週目(対照群42.8±8.13%, 黄疸群30.1±5.99%)より著明(p<0.01)に低下し, 2週目(対照群42.0±3.95%,黄疸群26.3±4.34%)および4週目(対照群45.3±4.92%,黄疸群26.9±4.06%)でより低下した. Scatchard解析よりこの低下は黄疸1週目では親和性およびレセプター数の低下が原因であり黄疸4週目ではレセプター数の低下が原因であった.
以上よりインスリンレセプター・グルカゴンレセプターの特異結合能の低下が閉塞性黄疸時の耐糖能異常,糖代謝異常の原因の一つと考えられた.

キーワード
閉塞性黄疸, 糖代謝異常, インスリンレセプター, グルカゴンレセプター


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