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日外会誌. 92(11): 1545-1551, 1991


原著

外科侵襲下の蛋白代謝に対するヒト成長ホルモン投与の効果

千葉大学 医学部第1外科
*) 千葉大学 動物実験施設

高木 一也 , 田代 亜彦 , 真島 吉也 , 山森 秀夫 , 奥井 勝二 , 伊藤 勇夫*)

(1990年9月13日受付)

I.内容要旨
外科侵襲下の蛋白代謝に対するヒト成長ホルモン(HGH)投与の効果を,基礎的検討としてラット熱傷モデルを用いて,臨床的検討として食道手術症例を用いて検討を加え,以下の結果を得た.
(I)基礎的検討;ラットTPNモデルにおいて,6日間のTPN管理後熱傷を作成,熱傷前日より3日間HGH 200mU/day投与したHGH群(n=16),及び非投与の対照群(n=15)につき比較検討した.熱傷後の累積窒素平衡はHGH群14.58±108.00(mgN/2days, mean±SD),対照群-57.79±76.51でありHGH群は有意(p<0.05)に良好な窒素平衡を示した.全身蛋白代謝回転速度,合成,分解共にHGH群はいずれも有意(p<0.01)に高値を示した.また侵襲の指標として尿中総カテコラミン排泄量を用いて窒素平衡との関係を見ると,HGH群,対照群共に有意(p<0.01)の負の相関関係を示し,両者の相関直線の比較より,同程度の侵襲を受けたときHGH投与により窒素平衡が改善することが示された.
(II)臨床的検討;術後同一条件下のTPN管理(エネルギー 30kcal/kg・day,アミノ酸2g/kg・day)を施行した食道手術症例において,術後5日間HGH 24I.U/day投与したHGH群(n=5),非投与対照群(n=7)の2群とし検討した.術後第2病日より第5病日までの累積窒素平衡は,HGH群80.54±55.00(mgN/kg・4days),対照群-273.60±97.60であり, HGH群は有意(p<0.01)に良好であった.全身蛋白代謝回転速度,合成,分解共にHGH群は高値を取り,特に合成は有意(p<0.01)に高値であった.

キーワード
成長ホルモン, 窒素平衡, 蛋白代謝回転速度


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