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日外会誌. 92(10): 1480-1485, 1991


原著

Lipiodol-制癌剤の門脈内投与による正常肝および再生肝組織到達性および残留性の増強効果

千葉大学 医学部第1外科

鈴木 裕之 , 宮崎 勝 , 飯沼 克博 , 宇田川 郁夫 , 越川 尚男 , 伊藤 博 , 奥井 勝二

(1990年9月11日受付)

I.内容要旨
転移性肝癌肝切除後の残肝再発の起因となると思われる微小転移巣に対する治療を目的に,リピオドール(LP)および制癌剤の肝組織内停滞に関し,ラットを用い基礎的に検討し,以下の結果を得た.①Aclarubicin(ACR)およびその代謝産物の総量の肝組織内濃度は,LP+ACR門脈内投与群がACR門脈内投与群に比し,正常肝で3日7日,肝切除後再生肝でも1日3日にて有意な高値を示した.②肝切除後残存肝に対する門脈内投与後1日で,活性分画であるAclarubicinおよびActivemetabolitesの肝組織内濃度は,ACR末梢静注群に比しACR門脈内投与群が有意な高値を示し,またLP+ACR門脈内投与群はより高値を示した.③肝切除後再生肝組織に与えるACR門脈内投与とLP+ACR門脈内投与の影響を投与1日でのHematoxylin-Eosin染色像で比較すると,LP+ACR門脈内投与群がACR門脈内投与群に比し組織障害が軽度である事が観察された.④Oil-Red染色において,肝切除後残存肝に対する門脈内投与後7日以上の肝組織内のリピオドールの停滞が確認された.
以上正常肝および肝切除後再生肝において,リピオドールを併用した制癌剤の門脈内投与により,制癌剤の肝組織到達性とその停滞性が増強され,より強い抗腫瘍効果が発揮しうるものと考えられた.

キーワード
肝切除, 制癌剤門脈内投与, リピオドール


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