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日外会誌. 92(10): 1461-1468, 1991


原著

食事刺激時の消化管ホルモン分泌に及ぼす50%上部,下部小腸切除術の影響
ーとくに intestinal adaptationに関連して

東北大学 医学部第1外科

加藤 三博 , 佐々木 巌 , 内藤 広郎 , 高橋 道長 , 松野 正紀

(1990年9月11日受付)

I.内容要旨
主として上部または下部小腸に存在する消化管ホルモンに注目し,ビーグル犬を対象として50%上部および下部小腸切除を行い,食事刺激時の消化管ホルモン分泌の変動および残存小腸粘膜の形態的変化を術後経過期間の違いから実験的に検討して,以下の成績を得た.
1.空腹時ガストリン値は上部,下部切除群のいずれも術後経過期間を問わず術前と差を認めなかったが,食事刺激による反応は上部切除群では18wでは亢進したが,下部切除群では4wで術前に比べ有意に低下を示した.
2.食事刺激に対するGIP分泌は下部切除群では上部切除群と同様に術前に比べて低反応を示したが,peak値の時間が早まる傾向を示した.
3.エンテログルカゴン分泌は上部切除群では4w,18wとも高反応を示したが,下部切除群では4wで高反応を示したが18wでは術前に近づく傾向が認められた.
4.小腸粘膜の絨毛長は上部切除群で4wにおいて十二指腸で有意に高値を認め,小腸中央部では上部・下部切除群とも有意差はないものの術後経時的に増加した.
以上より,小腸切除後の消化管ホルモン分泌は切除部位および術後経過期間の違いにより差が認められ,intestinal adaptationとの間に密接な関係が示唆された.また,エンテログルカゴンについては小腸粘膜増殖作用を有する可能性が示唆された.

キーワード
小腸切除, 血漿ガストリン, 血漿 GIP, 血漿エンテログルカゴン, intestinal adaptation


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