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日外会誌. 92(10): 1451-1460, 1991


原著

Borrmann IV 型胃癌に由来する胃癌細胞株 OCUM-1 の樹立と基礎的性状の検討

大阪市立大学 医学部第1外科

久保 俊彰

(1990年9月17日受付)

I.内容要旨
Borrmann IV型胃癌患者(38歳,女性)の胸水から癌細胞を分離培養し,BorrmnannIV型胃癌に由来する胃癌細胞株として樹立し,OCUM-1と命名した.現在まで3年156代継代を行っているが,旺盛な増殖を示している.そして,樹立した細胞株の特性を検討し,以下の成績を得た.
1) OCUM-1はリンパ球様の形態を示し,単独あるいは一部は塊状となって浮遊性の増殖を示した.電子顕微鏡による観察では多数のmicro villiが認められたが,細胞間構造には乏しかった.
2) 倍加時間は33.2時間であり,染色体モードは50, 細胞核DNAはdiploid patternを示した.
3) ヌードマウスの筋肉中にOCUM-1を移植すると腫瘤形成が認められ,継代移植も可能であり,組織学的にも生検で得られた組織と同様の組織像が認められた.
4) OCUM-1はEGFによって著明な細胞増殖の促進がみられたが,コンドロイチン硫酸では細胞増殖の抑制が認められた.
5) OCUM-1培養上清中の腫瘍関連抗原の検討ではCEAや1型糖鎖であるCA19-9, SPan-1値は高値を示したが,2型糖鎖であるSLXの産生は認められなかった.
6) 免疫組織化学的検討ではOCUM-1はCEA,CA19-9, SPan-1に陽性を示したが,SLXでは陰性であった.またEGFRも陽性を示した.
以上の成績から,今回樹立したBorrmannIV型胃癌に由来する胃癌細胞株OCUM-1は,その基礎的検討からBorrmannIV型胃癌の生物学的特性を検索する上に極めて有用であると考えられた.

キーワード
スキルス胃癌, 胃癌細胞株, Borrmann IV 型胃癌, EGF, コンドロイチン硫酸


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