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日外会誌. 92(7): 825-830, 1991


原著

原発性肝癌肝切除例における自己血輸血法の安全性と有用性

兵庫医科大学 第1外科

藤元 治朗 , 岡本 英三 , 山中 若樹 , 折山 毅 , 古川 一隆 , 河村 英輔 , 田中 恒雄

(1990年8月2日受付)

I.内容要旨
肝癌の肝切除術に対する回収式自己血輸血の安全性についての実験ならびに48例の臨床的検討を行った.密度標準粒子と超遠心を用いた密度勾配法では8例について,肝癌細胞1.056±5-3g/ml(m±S.D.),赤血球1.105±5-3g/ml(m±S.D.)g/mlと大きな密度差を認めた.遠心分離回収式自己血輸血機器による肝癌細胞一血液混合液の分離実験では分離後の洗浄赤血球溶液に癌細胞は検出されなかったが分離後の生理食塩水・血漿成分溶液よりは癌細胞を検出した.臨床例20例・100検体の術中回収血よりの洗浄赤血球の病理細胞診は全例class1であった.術前採血保存および術中回収血の組み合わせによる自己血輸血法による48例の平均他家血輸血量は施行前1年間の36例に比し全血・濃赤成分は1,573±197ml(m±SD.)より478±98ml(m±S.D.)に,有意に(p<0.05)減少した.以上の結果より肝癌を対象とする肝切除術において自己血輸血法は安全でかつ有用な方法であると考えられた.

キーワード
肝切除術, 肝癌, 自己血輸血, autotransfusor


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