[書誌情報] [全文PDF] (1518KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 92(7): 820-824, 1991


原著

半連続切片による胃癌大動脈周囲リンパ節転移の検討

金沢大学 医学部第2外科

松本 尚 , 米村 豊 , 瀬川 正孝 , 小坂 健夫 , 山口 明夫 , 三輪 晃一 , 宮崎 逸夫

(1990年3月23日受付)

I.内容要旨
進行胃癌の腹部大動脈周囲リンパ節(No. 16)転移に関して詳細に検討するために,郭清されたNo. 16リンパ節の50μ間隔半連続切片標本を作成しその転移状況を調べた.半連続切片作成例21例中転移を認めたものは7例(33%)であった.転移形態を4型に分類したところ,30個の転移陽性リンパ節のうち26個までが辺縁洞にわずかに癌細胞の存在する微小型であった.これらは半連続切片による検索ではじめて転移陽性と判断でき,術中での転移の判定は不可能と考えられた.肉眼的リンパ節転移とNo. 16リンパ節転移を半連続切片例と非連続切片例で比較した.非連続切片例でNo. 16リンパ節転移陽性であったものはN(-)5例中0例(0%),N1(+)20例中3例(15%),N2(+)20例中5例(25%),N3(+)3例中1例(33%)であった.これに対し半連続切片例ではN(-)2例中0例(0%),N1(+)11例中3例(27%),N2(+)3例中1例(33%),N3(+)5例中3例(60%)であった.すなわち腹部大動脈周囲リンパ節への転移陽性率は半連続切片による検索でさらに高率となった.n1(+),n2(+),n3(+)症例に対してNo. 16リンパ節まで郭清するR4手術(仮称)の5年生存率は70%とR3 50%,R2 47%より良好であり,R4によりこのような微小リンパ節転移が切除され,再発が未然に防がれた可能性のあることを示している.以上より腹部大動脈周囲リンパ節郭清は進行胃癌に対する根治度を高める意義があると考えられた.

キーワード
胃癌, 腹部大動脈周囲リンパ節, 胃癌拡大郭清手術, リンパ節, 半連続切片


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。