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日外会誌. 92(5): 535-542, 1991


原著

肝切除後におけるランゲルハンス島の機能的,形態学的変化とGI療法による影響

近畿大学 医学部第2外科(主任:久山 健教授)

金沢 秀剛

(1989年11月14日受付)

I.内容要旨
教室では肝切除後の膵ランゲルハンス島(以下ラ島)の変化について報告してきた.今回著者は肝切除後GI療法を行い,同療法がラ島に与える影響を検討した.
雑種成犬に40%肝切除術を施行し,術前,術後1週,4週に開腹し,門脈採血経静脈糖負荷試験(以下ivGTT)と膵生検を施行し,コントロール群とした.また,肝切除後GI療法を行って同様の実験を施行し,GI群とした.また,GI療法が肝再生に与える影響を見るため同様の犬を作成し,肝切除後4日における肝重量再生率を測定した.
肝重量再生率はコントロ一ル群67.0±3.0%,GI群75.0±4.0%とGI群の再生率が有意に良好であり,本実験で施行したGI療法は肝再生に好ましい影響があることが推測された.
門脈血インスリン値は,コントロール群で術前21±7,術後1週12±3(µu/ml)と肝切除後1週に有意に低下したが,GI群では術前23±9,術後1週27±14(μu/ml)と肝切除後1週での低下がコントロール群と比べて有意に改善された.グルカゴンについても同様の傾向を認めた.
Σ⊿IRIは,コントロール群で術前2,400±200,術後1週720±100(µu. min/ml)と肝切除後1週で有意な分泌低下を認めたが,GI群では術前1,900±700,術後1週1,800±900(µu. min/ml)と肝切除後1週での分泌低下がコントロール群と比べて有意に改善された.グルカゴンについても同様の傾向を認めた.
ラ島の面積は,コントロール群で術後4週に約3倍に肥大したが,GI群では術後4週での肥大を認めなかった.
肝切除後のラ島面積の変化,インスリン,グルカゴンの基礎分泌,分泌反応からみて,犬の肝切除後1週でインスリン,グルカゴンは枯渇状態にあり,肝切除後にこれらのホルモンを投与し補うことは望ましいと考えられた.

キーワード
肝膵相関, 肝切後のGI療法, 肝再生, ランゲルハンス島


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