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日外会誌. 92(5): 543-550, 1991


原著

肝再生における LAK 細胞の影響

岡山大学 医学部第1外科教室(主任:折田薫三教授)

卜部 貴光

(1990年4月16日受付)

I.内容要旨
脾リンパ球をIL-2と共に培養したいわゆるLAK細胞は,広範な腫瘍細胞に対する細胞障害活性のみならず,同系の幼若化リンパ球及び再生肝実質細胞を破壊する.そこでこのような能力を持つLAK細胞が,本来生体内において肝実質細胞の増殖の抑制に関与しているのではないかと考え,以下の実験を行った.
70%部分肝切除後12時間のマウスにLAK細胞を受身移入し,その後24時間の肝再生に与える影響を残存肝への3H-thymidine取り込みで測定すると,LAK細胞移入群は対照群に比べて31%の取り込み抑制を示した.また再生肝細胞初代培養系にLAK細胞を加えると,リンパ球/標的細胞比(E/T)50:1で97%の抑制が認められた.
次いでLAK細胞の分化・誘導・細胞障害活性に影響をもたらすIL-2を用いて肝再生に及ぼす影響を検討した.部分肝切除後におけるIL-2の投与は肝再生を38%抑制し,そしてIL-2産生を抑制するシクロスポリン(CsA)を投与することによって肝再生は逆に45%促進された.なおin vitroにおいてIL-2,CsAは直接には肝実質細胞の増殖には影響しなかった.
以上の事実より,LAK細胞が肝切除後の生体内において,再生肝の増殖を抑制している可能性が示された.

キーワード
肝再生, 部分肝切除, LAK 細胞, シクロスポリン, IL-2


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