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日外会誌. 92(3): 320-330, 1991


原著

大腸癌における1型血液型関連抗原 (Lea, Leb, CA19-9) の発現とその臨床的意義
ーCEAと対比してー

名古屋大学 医学部第2外科
*) 愛知がんセンター病院 消化器外科

桐山 幸三 , 渡辺 正 , 坂本 純一*) , 伊藤 勝基 , 秋山 清次 , 山内 晶司 , 高木 弘

(1990年3月22日受付)

I.内容要旨
大腸進行癌95例,早期癌37例,大腸腺腫11例,正常粘膜55例についてCEA,Lea,Leb,CA19-9の発現を免疫組織学的に検討し,その発現様式の変化から抗原の発現と予後との関連について検討を加えるとともに,転移巣と原発巣におけるCEAとCA 19-9の発現も比較検討した.さらにCA19-9の血清値や組織での発現のもつ臨床的意義について,1型の血液型関連抗原Leaの発現をもとに考察を加え以下の結果を得た.
1.CEA,Lea,Leb,CA 19-9の組織での発現は癌の進展につれて増加し,その陽性率はCEAが最も高く,またCA19-9とLebも腫瘍関連抗原としての意義を有すると考えられた.
2.CA19-9とLebの癌組織での発現率は非常に類似した傾向を示したが,Stage II,IIIの治癒切除例の予後検討ではCA19-9陽性群は陰性群に比し有意に予後不良であったのに対し,Lebでは陽性群と陰性群の間で予後に差を認めなかった.CA19-9陽性群では血行転移症例が多く,CA19-9の発現と血行転移との関連が示唆された.
3.CEAでは原発巣と転移巣ではその発現にほとんど差を認めなかったが,CA19-9では血行転移巣での発現が原発巣より増加する傾向にあり,CA19-9の発現と血行転移との関連を示唆する結果となった.
4.CEA,CA 19-9の血清値は,組織での発現が増加すると有意に上昇したが,CA19-9ではカットオフ値37U/ml越える症例は少なく,血清値の高い症例は肝転移併発例であった.
5.Leaの発現を認めなかった症例では,CA19-9の組織での発現や血清値は低値となるために臨床的評価に際してはこれを除外して考える必要があると考えられた.

キーワード
大腸癌, 血液型関連抗原, CA19-9, 免疫組織


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