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日外会誌. 92(3): 331-338, 1991


原著

肝門部肝血行遮断時の肝循環確保に関する実験的研究
肝エネルギー代謝からみた門脈二重バイパス法における送血量安全下限域

岡山大学 医学部第1外科教室(主任:折田薫三教授)

坂田 龍彦

(1990年2月15日受付)

I.内容要旨
肝十二指腸間膜レベルでの肝流入血行全遮断時に肝側門脈へ流量調節下に動脈血を送血した際の肝エネルギー代謝維持に必要な送血量下限域を知る目的から雑種成犬にて実験検討した.
全身ヘパリン化の後に門脈を切断し腸側門脈と下大静脈との間にバイパスシャントを設置して門脈系のうっ滞を解除し,肝側門脈断端へ左大腿動脈から動脈血を流量調節下に肝へ送血した.胆管以外の肝十二指腸間膜組織を肝動脈を含めて結紮した.肝への送血量を電磁流量計にて測定した総肝血流量の100%,75%,50%,25%,10%,0%の群に分けて,送血量別にみたバイパス120分間の肝組織のエネルギー代謝と水素クリアランス法による肝組織血流量の経時的変動から,肝の阻血に対する耐容性を検討した.正常犬の総肝血流量は42.9±11.5ml/min/kg BW(n=50)であり,送血量が総肝血流量の25%以上では送血120分間を通じて肝組織内のATP量とenergy chargeは前値レベルがよく維持されたが,送血量10%以下では送血30分ですでに著明に低下し,肝内lactate量およびlactate/pyruvate比の著増がみられ嫌気性解糖が充進していた.肝組織血流量も10%群以下では著減しており,肝エネルギー代謝維持に必要な送血量の下限は総肝血流量の25%と10%の間に存在した.

キーワード
肝阻血耐容性, 肝エネルギー代謝, 肝組織血流量, 門脈二重バイパス, 肝十二指腸間膜切除


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