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日外会誌. 92(2): 214-221, 1991


原著

Multiple Organ Procurement
ーその手技,保存方法,Viablity

東京女子医大日本心臓血圧研究所 循環器外科
*) 腎臓総合医療センター 

八田 光弘 , 小柳 仁 , 遠藤 真弘 , 渡辺 直 , 藤川 博康*) , 寺岡 慧*) , 太田 和夫*)

(1989年9月12日受付)

I.内容要旨
我が国の移植外科の現状を考慮すると,臓器提供者の不足は深刻な問題であり,今後の移植医療の多様化に際して何らかの対策が必要である.今回我々は,同一提供者からの多臓器摘出の手技,及び保存方法について検討を行い,若干の知見を得たので報告する.6頭の雑種成犬をドナーに用いて,開胸,開腹を行い,上行大動脈,肺動脈,総肝動脈,開脈を剥離し,心臓,肺,肝臓を摘出した.臓器保存に用いた灌流液は冷却UCLA Formula(UCLA溶液)を心肺ブロックに使用し,肝臓に対してはLactate Ringer溶液及び冷却ユーロコリンズ溶液を用いた.心肺及び肝臓を摘出後,それぞれ保存し,同所性心移植,左片肺移植,同所性肝臓移植を行い,Viabilityを評価した.虚血時間は心臓4.3時間,肺7.5時間,肝臓6時間であった.
心臓移植後急性期4時間までのViabilityは術前心拍出量(CO)(l/min)は4.01±1.36,術後1時間値3.26±0.68,術後4時間値3.24±0.26であり,有意差を認めなかった.LVEDP(mmHg)の測定では術前7.1±0.8,心移植術後1時間値では6.5±0.86,4時間値では7.4±1.2であった(NS).左肺移植後のViabilityは右肺動脈気管支を遮断し移植肺に全血流を誘導し,気管内圧一容量曲線及び動脈血酸素濃度(PO2)について評価した.気管内圧一容量曲線は術前,術後1時間,4時間値とも有意な差を認めず,良好であった.PO2においても術前,術後1時間値,4時間値ともいずれも良好な値を示した.肝臓移植後の肝機能の評価はICGテストにより行い,術後値は35~40%(15分値)と術直後としては良好な値を示した.
以上から,今回我々は,心臓,肺,肝臓の同時摘出手技を確立するとともに,UCLA溶液による心肺の保存及び急速フラッシュ法による肝保存方法の有用性を示した.

キーワード
心肺移植, 心移植, 肺移植, 肝臓移植, 臓器保存


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