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書誌情報]
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日外会誌. 92(2): 113-117, 1991
原著
消化器外科におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の消毒剤耐性に関する検討
I.内容要旨当科で1986年よりコアグラーゼII型のメチシリン高度耐性株(H-MRSA,最小発育阻止濃度, MIC>100μg/ml)の流行が問題となったが,消毒剤をポビドンヨードからクロルヘキシジンーエタノール溶液に変えるなど院内感染対策を行ったところ1988年には分離数が減少した.しかし現在再びMRSA感染が漸増しており,その原因として消毒剤耐性についての検討をおこなった.
コアグラーゼII型のH-MRSA 45株,メチシリン感受性株(MSSA, MIC<12.5μg/ml)22株を対象とし以下の実験をおこなった.消毒効果の判定は,各消毒剤におけるMIC並びに,菌液と消毒剤を一定時間接触させた後,中和剤を加え反応を停止させ残存する細菌数を比較することによりおこなった.
H-MRSAに対し, in vitroで最も有効な消毒剤は100倍希釈ポピドンヨードとクロルヘキシジン-エタノール溶液であった.H-MRSAとMSSAの比較では, MICではH-MRSAの方がクロルヘキシジンと塩化ベンザルコニウムに対しより抵抗性大の傾向がみられたが,ポピドンヨードに対しては差はみられなかった.細菌と消毒剤の接触時間を加味した実験でも同様にポビドンヨードにおいては感受性に差はみられなかったが,クロルヘキシジンにおいてはH-MRSAの殺菌に要する時間はMSSAと比べ遅延していた.120秒間接触させても13.3%のH-MRSAはクロルヘキシジンに対し耐性であった(残存する細菌数1,000コロニー以上).このクロルヘキシジン高度耐性株は病棟でクロルヘキシジン-エタノール溶液を頻用した1988年以降に検出されており,当科におけるMRSAの再流行の原因の一つと推察された.
キーワード
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌, 院内感染, 消毒剤, コアグラーゼ型別分類
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