[書誌情報] [全文PDF] (1481KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 92(1): 82-88, 1991


原著

二次性三尖弁閉鎖不全症の病態と術式の選択

鹿児島大学 医学部第2外科

森下 靖雄 , 有川 和宏 , 豊平 均 , 下川 新二 , 梅林 雄介 , 西元寺 秀明 , 平 明

(1989年12月7日受付)

I.内容要旨
二次性三尖弁閉鎖不全(TR)を伴った連合弁膜症111例を対象とし,69例 (I群) に三尖弁手術を行い,42例 (II群) はTRが軽度で放置した.I群は47±11歳 (Mean±SD),男女比は34対35で,施行した手術は僧帽弁置換 (MVR)+三尖弁弁輪形成術 (TAP) 48例, MVR+大動脈弁置換 (AVR)+TAP 8例, MVR+三尖弁置換 (TVR) 6例, MVR+AVR+TVR 2例,その他5例であった. TAP61例中39例にCarpentier (C) リングを用い,20例にDe Vega法,2例にKay法を施行した.8例にTVRを行った. II群は51±12歳,男女比は16対26で,手術はMVR 34例, MVR+AVR 3例, OMC2例,その他3例であった.
I群の早期死 (術後30日以内) は4例 (5.8%),晩期死亡は5例 (7.2%) であった.早・晩期併せての死亡9例中8例がC-リング使用例であった.II群の早期死は2例 (4.8%),晩期死は3例 (7.1%) であった.術後 (平均54ヵ月),61例 (I群37例,II群24例) で,2DE及び連続波ドップラーによるTR最大血流速度を用い三尖弁を評価した.I群の45.9%にII度以上のTRが残存し,全てC-リング使用例であった.それらの術前心胸郭比 (CTR),肺動脈収縮期圧 (PAPs),肺対体血圧比 (Pp/Ps) は各平均71%,75mmHg,0.61で心拡大,肺高血圧の著明な症例であった.TVR症例はいずれもTRI度以下であった.II群の29.2%にII度以上のTRが残存し,それらの術前CTR,PAPs,Pp/Psは各平均71%,44mmHg,0.34と軽度肺高血圧と著明な心拡大を伴った.
De Vega法に比べ, C-リング使用例に死亡及び術後TR残存例が多く,その使用適応例の選択には再検討の必要性があると考える.TR軽症例ではDe Vega法を,それも,前尖,後尖に別々に縫縮糸を置くDe Vega変法を第一選択とし,心拡大,肺高血圧の著明な症例に対しては, TVR適応の拡大を考慮すべきと考える

キーワード
二次性三尖弁閉鎖不全, Carpentier リング法, De Vega 変法, 三尖弁置換術, 残存 TR


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。