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日外会誌. 92(1): 75-81, 1991


原著

乳癌の超音波検査像と組織構築

天理よろづ相談所病院 腹部一般外科

西村 理

(1989年12月18日受付)

I.内容要旨
乳癌の超音波断層像における腫瘍像 (低エコー域) の成因を明らかにする目的で,病理組織学的に乳癌と診断された62例を対象に,肉眼的形態をGallagerの基準に従って分類し,腫瘍内の癌細胞占拠率,超音波断層像における低エコー域,および切除標本割面のサイズを比較検討した.
乳癌の肉眼的形態はKnobby type 53例,Stellate type 7例,Spiculate type 2例であった.癌腫内の癌細胞占拠率を組織学的に検討すると,Knobby typeをしめす群は辺縁部61.1±22.0%で中心部の13.5±17.3%より高値であり (p<0.01),その超音波検査上の横径1.84±0.91cmと切除標本割面径2.38±0.96cmとの間にも差を認めた (p<0.01).一方,非Knobby typeの群では辺縁部における細胞占拠率 (28.4±17.2%) と中心部のそれ (9.8±9.5%) との間,および超音波径 (1.71±0.71cm) と切除標本割面径 (1.82±0.69cm) との間に共に差を認めなかった.
以上の結果より,癌腫内の細胞成分が一様に少なく,線維成分に富むものは癌腫全域が超音波断層上で低エコーを呈するが,辺縁部が細胞成分に,中心部が線維成分に富むものでは癌腫辺縁部は低エコー域に含まれがたいと考えられた.乳癌の多くは後者の組織構築をとるので,その超音波断層上の低エコー域は切除標本割面や触診の径より小さいことが多く,この相違に基づいた良悪性の鑑別が可能であることが示唆された.

キーワード
乳癌, 乳癌の診断, 超音波検査, 病理組織学


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