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日外会誌. 92(1): 12-16, 1991


原著

ガストログラフィンテストによる十二指腸潰瘍穿孔の
保存的療法選択に関する検討

近畿大学医学部附属病院 救命救急センター
*) 近畿大学 医学部第2内科

泉本 源太郎 , 高橋 均 , 北岸 英樹 , 坂田 育弘 , 安富 正幸 , 山本 俊夫*)

(1989年12月11日受付)

I.内容要旨
十二指腸潰瘍穿孔の保存的療法の適応は一般的には,1)空腹時発症で,2)発症から6時間以内に受診し,しかも,3)24時間以内に症状および腹部理学的所見の改善をみる症例であり,すなわち穿孔部が被覆された症例である.被覆性か否かの補助診断法としてのガストログラフィン造影は穿孔の診断および治療法の決定に用いるには問題が多い.このため,ガストログラフィン投与後の尿中ヨード排泄量を測定することによってガストログラフィンの腹腔内漏出を確認するガストログラフィンテストの効用について検討した.十二指腸潰瘍穿孔症例10例と正常腸管症例20例に胃チューブから100mlのガストログラフィンを投与したのち,10分毎の採尿を180分まで行い,尿中ヨード濃度を誘導結合プラズマ発光分光分析法で測定しヨード排泄量を算出した.正常腸管症例の平均値+2×標準偏差よりも高い値の十二指腸潰瘍穿孔症例は7例で,いずれも穿孔部は開放性であった.このうち2例はガストログラフィン造影では漏出を認めなかった.十二指腸潰瘍穿孔症例3例のヨード排泄量は正常腸管症例の平均値+2×標準偏差よりも低い値であった.このうち2例は,手術時には穿孔部は閉鎖されていて保存的療法の可能性があったと考えられた.残る1例は保存的療法にて治癒した.ガストログラフィン造影にて漏出を認めず,しかも尿中ヨード排泄量の少ない症例では穿孔部が閉鎖している可能性が高いために保存的療法の適応と考えられた.

キーワード
十二指腸潰瘍, 潰瘍穿孔, 保存的療法, ガストログラフィンテスト, 誘導結合プラズマ発光分光分析法


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