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日外会誌. 92(1): 5-11, 1991


原著

抗腫瘍性多糖レンチナンによる臨床における
補体系活性化作用発現の多様性

東京医科歯科大学 第1外科

竹下 公矢 , 斉藤 直也 , 佐藤 康 , 丸山 道生 , 砂川 正勝 , 羽生 丕 , 遠藤 光夫

(1990年1月17日受付)

I.内容要旨
補体系の副経路をin vitroで活性化することが報告されている免疫賦活剤・レンチナンの臨床使用時における補体系活性化作用発現の有無について検討した.胃癌切除症例13例を対象として,レンチナン4mgを2週に1回のスケジュールで静注し,毎回投与直後に採血,補体系活性化の指標として,補体系副経路の反応産物C3a, C5aを測定し,投与前値と比較した.その結果,レンチナンの補体系活性化作用の発現は,C3aの投与直後の値により次の3つの型に分類できることが明らかとなった.(I)常に弱い活性化しか発現しないもの(3例/13例),(II)強い活性化が発現し,その後は弱い活性化しか発現しないもの(6例/13例),(III)強い活性化が発現後は毎回強い活性化が発現するもの(4例/13例).レンチナンによる補体系活性化反応発現の多様性は,性との関連も示唆されたが機序は不明であった.
レンチナン投与直後に上昇したC3a値は投与翌日には投与前値に回復する一過性の作用であった.C3a, C5a両方とも投与直後に高値を示した症例では顔面紅潮,灼熱感などの一過性の副作用を認め,補体系活性化作用はレンチナンの副作用発生の原因となっていると考えられた.また,C3a濃度が上昇しているときには一過性の好中球,リンパ球を中心とした白血球数減少およびリンパ球機能(IL-2産生能)の増強を示した症例もあり,レンチナンの免疫賦活作用発現の引金となっていることが示唆された.

キーワード
レンチナン, 補体, C3a, インターロイキン-2(IL-2)産生能, 胃癌


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